お世話になっております。
現場で拾ったものが上着のポケットに溜りがちな池田です。
先日、姶良市西餅田の現場にて気密検査を行いました。
今回は姶良市西餅田の気密検査の結果と、ホームページも新しくなりましたので毎度見て下さっている方からすればくどいかもしれませんが、再度住宅の気密性を良くするとどうなるのかを改めてご説明したいと思います。
まず、気密性を判断する為の数値にc値(相当隙間面積)というものがあります。
これを簡単に説明すると『家の面積に対して、家の基礎や壁、屋根にどのくらいの隙間があるか』を示しています。このc値の値が低い程、隙間が少なく気密性が良い家という事になります。
近年、気密性を気にしている住宅メーカーさん、工務店さんは基本的にc値が0.7以下になる様に工事を行っている場合が多いですが、兼ねてから高気密住宅と呼ばれる家を建てている会社だとc値はおよそ0.3~0.1程の数値が出ている所も多いかもしれません。
このc値を測る為に行うのが気密検査です。
気密検査は防水処理が出来た時点(断熱材施工後に気密テープやコーキング、吹付ウレタンフォームで気密処理を行い、キッチン、浴室、24時間換気、エアコン等ダクト関係の貫通部分の施工後)で行うことが出来ます。
ざっくり気密検査の原理を説明すると、引き渡し時には塞がる上記ダクト関係を目張りして塞ぎ、玄関、サッシを閉じた状態でサッシを一箇所のみ開け、送風機を設置します。送風機から強制的に室内の空気を排出することによって、施工時に気密処理できていない僅かな隙間から室内に空気が入ってきます。その隙間から入ってくる空気量から隙間の大きさ(c値)や隙間のおよその分布を割り出すことが出来ます。
姶良市西餅田の現場のc値は正匠の中でも過去最高値の0.12でした。(下写真の表では少数第二位が切り捨てられて0.1の表示になっています。)
次に家の気密性能を良くするとどういったメリットがあるかをご説明いたします。
1.エアコン等で冷やした、もしくは温めた室内の空気が外に逃げなくなる。
隙間から空気が出入りするとせっかく室内で冷やした、もしくは温めた空気を外に逃がしてしまう事になります。温度を逃がしてしまえばエアコン等で更に温度調節する必要があり、電気代も余計にかかってしまします。気密性を良くして隙間をなくす事で、熱損失が少なくなり電気代も安く済みます。
2.壁内(床下、小屋裏)結露を防止できる。
1の内容も含みますが、特に室内の空気を温める冬場は建物下部の隙間から入った冷たい空気が壁内に入り込み、温めた室内の温度と接触すると、壁内で湿気が水滴化(結露)しだします。結露によって生まれた水滴は断熱材や柱、土台等の木材、内壁の下地になる石こうボード(プラスターボード)の裏側を濡らし続け、腐らせたりカビが生えたりします。
特に石こうボード(プラスターボード)は押し固めた石こうの表裏に紙が貼ってある材料で、石こう、紙共にカビが生えやすい素材です。リフォーム、リノベーションをした際に壁を解体すると壁の裏側は真っ黒…..という事がよくあります。隙間をなくす事で壁内に外気が入るのを防ぎ、内部結露も防げます。
3.計画的な換気が出来るようになる。
建築基準法では住宅の居室については2時間で室内の空気全て入れ換える事が義務付けられています。この法律が出来たのは、畳間が続いているような昔ながらの家からすると正確な寸法の材料が機械で造られ、木材も工場で精密に加工され、高気密を意識しなくともc値=2.0~5.0程度の気密が確保できるようになり、ホルムアルデヒド等の有害物質が室内の空気に多く留まってしまったからです。現在の家づくりではこの法律を守る為にどの住宅メーカーでも24時間換気の施工を行います。
24時間換気にもいくつか種類がありますが、基本的には設計段階で室内の体積から換気計算を行い、換気経路なども確認をして、2時間で室内全体の空気の入れ替えが出来る機械を取り付けます。しかし家に隙間があると、そこから予期せぬ空気の流れが起き、計画したはずの換気計算や換気経路を無視して湿気や臭い、汚れた空気が動きます。
特に昨今の24時間換気の設備は熱を逃がさない様に熱交換の機能を備えているものも多く、上記の1の様な事が起きると熱交換の機能を入れても無駄になる、なんてことになりかねません。
計画的な換気が出来るようにする為にも気密性は重要である事が分かります。
気密性のメリットと言ったものの本来あるべき家づくりを考えると、必然的に一定以上の気密性能は必要な事の様な気もしますよね。
実は気密の歴史を追うと、1999年に制定された『次世代省エネ基準』には気密は『c値5.0以下であること』と記載がりました。ですが、2012年に制定された現在の『改正省エネ基準』になるとc値に関する記述が丸々削除され、気密に関しての言及がありません。気密を確保する為には最初に記載した通り、貫通部の処理や気密テープを貼ったりと工事に手間が掛かります。材料も増えますが何より人件費が増えます。また、施工する職人さんの施工の丁寧さによってc値がかなり左右される為、材料の工場生産が増えた現状の家づくりでは過半数の住宅メーカーが気密を追及するのが難しいと判断されたのかもしれません。
ですが、上記の1、2、3を考えると、そもそも断熱住宅は気密性が良くないと成立しません。
よく社内でも例えで出ますが、真冬ににいくら厚いダウンコートを着ても、前のチャックを空けていては空気が入ってきて寒いですよね。家も同じで、いくら厚く断熱材を敷き詰めても、隙間があれば空気が入ったり温度の移動があるわけです。
少し長くなりましたが気密の重要性を分かって頂けたでしょうか?
次回の新築塾13時間目の方でも気密に関して記載致しますので、そちらも合わせて是非ご覧下さい。
以上、池田でした。